春の穏やかな日差しが気持ちがよい4月の終わり。
惟子はいつも通り、窓の外に見える海を眺めた。

ここ、「カフェプリュイ」は静かな海辺の町の高台の上にある。
プリュイとはフランス語で雨をあらわすが、この場所はあまり雨が降らない。
そんな場所のこのカフェのオーナーである惟子はいつも通り店を開けた。

更科惟子(サラシナユイコ) 24歳 真っ黒な黒髪、真っ黒な瞳、どこからみても純日本人という外見で、どこにでもいそうな、普通の人間だと惟子自身思っている。
2年前、亡き祖母が営んでいた喫茶店を、リノベーションして始めたのが今の店である。

その小さな町の小さなカフェは、近くの住人の憩いの場だ。
「いらっしゃいませ」
「惟子ちゃん、おはよう」
そんな挨拶を交わしながら、惟子は近所にすむ初老の夫婦を店へと招き入れる。
「モーニング、どうしますか?」
窓際のいつもの席に案内をして、惟子は白いメニューを二人にみせた。

今日のモーニング
A ふわふわたまごのサンドイッチ
B ベーコンとトマトのホットサンド
C バタートーストとサラダ

そのメニューをみた二人は、嬉しそうに顔をほころばせる。
「ゆいちゃん、今日は卵サンドあるのね」
その女性の言葉に、惟子もにこりと微笑んだ。
「そうなんです。今日は三輪さんのおうちの鶏が卵産んでくれたんですよ」
近所で小さな養鶏を営むおじいさんから、惟子は卵を購入していた。

安心安全がモットーのこのお店は、近隣の人たちや、惟子自身が育てている野菜を使用している。

「そうなんだ、三輪のおじいちゃん届けてくれたのね」
「はい」
こんないつもの朝を惟子は嬉しく、忙しく働いていた。

#あやかし飯 1 〝ふわふわたまごのサンドイッチ”

生みたての卵はまだ少し温かく、それをシルバーのボールに3個入れる。
生クリームと塩と胡椒、そして隠し味に本当に少しのアンチョビ。
よくかき混ぜて、バターを溶かしたフライパンへ勢いよく流し込む。

「うーん、いい香り」
窓際から聞こえてきたその声に、惟子の頬もつい緩む。
ふわふわと火が半分ほど通ったところで、手早くかき混ぜて形を整える。
近所のパン屋さんのふわふわの食パンに、自家製マヨネーズとバターを軽く塗ってから、卵を乗せる。

(美味しそう)

軽く押して出来上がり。
真っ白なお皿に、サラダと、ヨーグルト、そしてカットしたサンドイッチを乗せる。