山深い、田舎の小さな集落には保育園と小学校と中学校が並んで建っています。

ここが私たちの、香山中学校です。

香山保育園に通い、香山小学校を卒業し、私たちは中学も今年度で卒業予定。
私たちの下には、まだ数人の子がいるけれども中学生になる子はおらず、中学生が入るまでは一旦中学はお休みになるらしい。


この小さな集落には秘密があって、ここはもののけの集落なんです。
みんな人間に化けるのが上手で、普段は何食わぬ顔で街にも行きますが、その正体はもののけ。

そんな中で私は珍しく人間です。

私の父はここで唯一の診療所をしていてお医者さん。
あやかしの皆さんも風邪って引くんですよ。
意外でしょ?

そしてお母さんは看護師です。
元気なおばあちゃんは、今は日本各地を旅しています。

そんな、私以外にいる私の同級生は珍しく三人います。

九尾マチ子ちゃんは私の親友、名字が表すとおり彼女は九つの尾を持つ狐のもののけ。

艶やかな金に輝く毛の美しい狐の姿を持つ彼女は、人間に化けると金髪の美人さんになる。

そして、古谷大吉。
のほほんとした見た目の彼は、化け狸。
タレ目で、ぽやっとしている優しい男の子。

最後が私の大好きな幼なじみで彼氏の舘野絋。
彼も化ければ普通の人に見えるけれど、本来は顔のないのっぺらぼう。
会話は念話だし、ちょっと奥手で付き合ってるのに未だに手も繋いでくれないけれど、優しくって、一緒にいると温かくって、大好きなんだ。

たとえ表情が無くったって、長年一緒の私にはほんの少しで彼のことは分かっている。

そう思っていたんだ……。