『神様はどうして、こんなところにひとりでいるの?』

『俺は、この神社の神だからだ。とはいえ、長い間この社にいるが、人間に会うのは数百年ぶりになる』

『数百年!? そうなんだ……私もね、あなたみたいな綺麗な神様に会ったのは初めてなの! ねえ、神様は願いを叶える神様なんでしょう? なら、あなたのお願いも叶えられるの?』


 願いを叶える神様の願い。それを知りたかったのは、単なる好奇心だった。

 人間みたいにお金持ちになりたいとか、好きな人と結ばれたいとか、そういうことを願うのかな?

 首が痛くなるほど、背の高い神様を見上げる。わくわくしながら答えを待っていると、ようやく金色の瞳が私を捉えた。


『俺の?』

『うん、神様はどんなことを願うのかなって気になって』

『自分の願いなど考えたことはない』


 わずかに目を見張った神様は、不思議なものでも見つめるかのように私の方へ向き直る。


『その魂を持つだけあって、器はやはり変わっているな』

『うん?』


 神様の言っていることがよくわからなくて首を傾げる。

そんな私の頭に神様の大きな手が優しく乗った。