『あ……』


 すごく、綺麗な人……。

 その男の人からは高貴な雰囲気が醸し出されていて、近寄りがたさを感じた。

けれど、はっと息を呑んでしまうほど綺麗な顔をしている。

このときの私は目が離せないくらい、その人に釘付けになっていたはずだった。

でも、記憶が曖昧で顔はぼんやりとしか思い出せない。


『なんだ。人間の小娘が迷い込んできたか』


 私の方は見ずに、低く威厳のある声で彼は言った。

 私に話しかけてるんだよね? そばにいってもいいのかな?

 恐る恐る、私は神様に歩み寄る。隣に立って初めて、神様の背がものすごく高いことに気づいた。


『あなたは誰?』


 人ともあやかしとも違うような気がする。この人の周りだけ空気が澄んでいて、なんというか……。


『人の祈りを叶える神だ』


 そうだ、神様だ。

それを聞いて、しっくりきた。それも今まで出会った神様たちとは、纏う空気の綺麗さがうんと違う気がする。

付喪神みたいに変わった姿をしている神様には会ったことがあったけれど、人の姿をした神様には初めて会った。