このたび不本意ながら、神様の花嫁になりました

「白、前を見て走らないと怪我をするだろ」


 はあっと息をついた黒さんは、折り目正しく朔にお辞儀をする。


「おかえりなさいませ、朔様」

「ああ」


 短く返事をした朔は神宮の方へ足を向けると、ちらっと私を見る。


「あれだけ大々的に暴れれば、お前は職を失ったも同然。もう、俺のところにいるしかないな。なあ、雅?」


 意地悪くも妖艶に微笑む桜月神社の奉り神。

 まさか、朔は私を助けたわけじゃなくて、逃げ場を奪うために職場に押しかけてきたんじゃ……。

だとしたら、なんて手の込んだ真似を……。

 上機嫌に鼻歌まで歌いながら歩き出す朔の背中を見つめつつ、私はどっと疲労感に襲われるのだった。