「お前の言っていることは難シイ」


 ……どうしたら、伝わるんだろう。

あやかしには食べられそうになったり、いたずらされたり。

それはもうひどい目に遭わされてきたけど、同じくらい助けられてきた。

本当は優しいんだって、私はちゃんとわかってる。でも……。

 私はオフィスの入り口にいる社員たちを振り返った。

あやかしの起こした怪異を目の当たりにして、怖がっているのが強張った表情から見て取れる。

 こんなふうに、あやかしが怖がられてるのを見るのは……胸が苦しい。

私もあの畏怖の目にさらされてきたからこそ、なおさらそう思う。


「私は……この奇跡の魂ってやつのせいで、周りで怪奇現象ばかり起こっちゃって。人間の友達がなかなかできなかった。それだけじゃない、家でも気味悪がられて居場所がなかった。いつも自分だけ生まれた世界を間違えたんじゃないかって、すごくすごく悲しかったの。でも、そんなときにあなたたちがそばにいてくれた。だから、寂しくなかった」


 あやかしは黙って、私の話を聞いてくれているようだった。

簡単に説得できるとは思っていなかったので、それだけでも好感触だ。