「そもそも、私を食べて簡単に強くなろうなんて、ずるすぎない? そんな楽して力を手に入れようとするなんて、よっぽど自分に自信がないのね」


 恐怖に蓋をして強気に振る舞えば、あやかしは痛いところ突かれた、みたいな顔をしてぐっと黙り込む。

一応、私の言葉が効いているらしい。

話せばわかってくれるかも、と期待をしつつ言葉を重ねる。


「ねえ、それ以上強くなってどうするの?」

「どうもしない、強さを求めるのはあやかしの本能ダ」

「でも、自分の目的のために誰かを傷つけるのは弱い人のすることだと私は思うよ」


 そうは言ってみるけれど、人間の私の考えがあやかしに伝わるかどうかはわからない。

そもそも価値観が違うのかもしれない。

 案の定、あやかしは眉を寄せて困ったように唸った。

しかも首を傾げた勢いで、くるくると頭を回転させている。