「奉り神だけに極上の魂を独り占めさせるわけには、いかんからナァ」


 ゆっくりとあやかしは私の目の前に近づいてくる。

朔の嫁になった効果が、このあやかしには発揮されていないみたいだ。


 ――ってことは、強いあやかしってこと?

 私は恐々と骸骨蜘蛛を見上げる。

 怖い……けど、ちょっと腹も立ってきた。

もう、なんなの。みんなみんな、私の魂を食べるだとか、嫁にして力を手に入れるだとか、自分勝手にもほどがある。

よし、ひとこと物申そう。

 私は立ち上がると、震える膝に力を入れてあやかしに対峙する。


「あのねえ、私の命も魂も身体も私のものなの! 誰のものにもならない! そうやって、なんでもかんでも自分の思い通りになると思わないで!」

「お前の意思ナド、知ったことではないワ」


 なんですって……。
こっちは仕事中だっていうのに、職を失ったらどうしてくれるの。
生活がかかってるのに! もう頭に来た!

 私は腰に手を当てて、びしっとあやかしを指差す。