「なに、あれ……」


　頭蓋骨から八本の足が生えた蜘蛛のようなあやかしがオフィスの広い窓を覆うように張りついていて、光を遮っていた。

　でも、あの骸骨蜘蛛に気づいているのは私だけで、他の社員は一心不乱にパソコンにかじりついている。

　骸骨蜘蛛から視線を逸らせないでいると、大きな赤い目玉がギョロッと動いて私の姿を捉えた。


「ああ、やっと見つケタ。お前を食らっテ、力を手に入れてヤル」


　そう言ってあやかしが大きく口を開けた途端、キーンと耳鳴りがする。

窓ガラスがガタガタと揺れ、ようやく社員たちがパソコンから顔を上げた。

その瞬間、バリンッとオフィスの窓ガラスが割れる。

激しく吹き込む風にカーテンがバタバタと音を立ててはためき、社員たちの悲鳴が響き渡った。


「いった……」


　飛んできた破片が頬を掠って、私は思わず床に座り込んだ。

社員たちは次々と席を立ちフロアの入り口まで避難すると、怯えた表情で部屋の様子を窺っている。