『俺の嫁になれば、他の神もあやかしも簡単には手を出せまい。お前にとってはいいこと尽くめだろう』

 あれって、こういうことなのかな?

 朔を怖がってあやかしたちが逃げていく……。

あの人、どんだけ強い神様なの? 

というか、〝不本意だけど〟私が朔と結婚したってなんでわかったの?

 まさか、さっきあやかしが言ってた神気ってやつ? 

朔の匂いでもするのかな?

 試しに腕に鼻を近づけて、匂いをかいでみる。


「無臭だ……って、私はなにをしてるんだろ!」


 ひとりで突っ込んでいると、同僚たちから「芦屋さん、ひとりで喋ってるよ」「さっき俺、腕の匂い嗅いでるの見たんだけど」「えーっ、こわーい」というひそひそ話が聞こえてくる。


 やってしまった……。と、とにかく! 

神様の花嫁効果がこんな形で役立つなんてありがたいけど、やっぱり愛のない結婚は絶対に無理!

 とはいえ、身の安全と天秤にかけると、ほんの少し嫁になってもいいかもしれない……なんて。

そんな風に傾きかけた自分の心から目を逸らすべく、私はパソコン作業に没頭する。

 それから数時間ほど経ったときだった。

急に外が暗くなった気がして、私はキーボードを打つ手を止める。

ちょうど太陽が雲で隠れたのかもしれない。

そうは思いつつも嫌な予感がして窓の外を見た瞬間、私は言葉を失った。