「よろしくね、白さん」

「もうっ、余所余所しいのはなしだよ! 白とか、白くんって呼んでほしいな?」


 小首を傾げながら、ふふんっと鼻歌を歌う白くん。

おやつをもらうときの犬みたいに尻尾をぶんぶんと振っている。

災難続きで疲れていたので、無邪気な白くんに癒された。


「朔様から許嫁はいるって聞いてたけど、どんな子なのかずっと教えてくれなかったんだ。でもまさか、こんなに可愛い女の子だったなんて!」

「あの、そのことなんだけど、たぶん人違いで……」

「ええっ、じゃあ帰っちゃうの? いなくなっちゃうの……?」


 うるうると瞳を濡らす白くんに、私はうっとうめく。

 そんな悲しそうな顔をしないで!

 良心がチクチクと痛んで返答に困っていると、私の上から白くんがいなくなる。

正確に言えば、白くんは黒髪の男性に片腕で抱き上げられていた。