「これはこれはっ、雅様!」

 ぽんっと煙を立てて、子犬が浅葱色の袴に身を包んだ白髪の男の子に姿を変えた。

 ――え!? この子、さっき結婚式で介添えをしながら号泣してた狛犬さんだ!

 犬の姿にも人の姿にもなれることに驚いていると、狛犬さんは勢いよく私の首に抱き着いてきた。


「結婚、おめでとうーっ」


 頬をすりすりと擦り合わせてくる狛犬さんに、私はされるがまま考える。

 なにこれ、狛犬流のお祝い? 
そもそも、私は結婚したつもりはないんだけど。

 反応に困っていると、狛犬さんははっとした様子で私から少し身体を離した。

「そうだっ、雅様。ごめんね、ぶつかっちゃって! 痛いところはない?」

「ううん、それは大丈夫だよ。それより、あなたはさっき白無垢に着替えさせてくれた……」

「僕は白だよ! 今日から雅様のお世話も精一杯頑張るから、なんでも頼んでね!」


 狛犬さん――白さんの髪からちょこんと顔を出している、ふたつの犬耳と尻尾がぱたぱたと揺れている。

 ふわふわで、もふもふ……可愛いなあ。

 白さんのあどけない笑顔を見ていたら、毒気を抜かれてつい口元が緩む。