「あやかしに啖呵を切るとは、愚かではあるがお前らしい。その魂、変わらず清らかなだけでなく、輝きを増したか」


 低く威厳のある声が響いたと思ったら、天からふわりと花びらが舞い降りるように男性が現れた。


「え……」


 二十代後半くらいだろうか。背の高いその人は、あやかしから私を庇うようにして立ってくれた。

 それから頭の高いところでまとめられた長い雪のような銀髪をなびかせ、私を振り向くと、月とも太陽ともとれる金色の瞳を向けてくる。

 綺麗な人……。

 夜空を連想させる紺色の着物には華やかな桜が描かれており、細くもがっしりとした腰には黄金の帯が留められていた。 

 纏う空気が澄んでいて、見る人を無条件で魅了してしまうような神々しさを放っている。

この人は、きっと神様だ。

これまで出会ってきた神様も大なり小なりあるけれど、誰もが人を惹きつけるカリスマ性のようなものを持っていたから。


「だが雅、猪突猛進もほどほどにしろ。これでは命がいくつあっても足らんからな」

 腰に差している刀を鞘から抜いた神様は、教えたはずのない私の名を口にした。

「どうして、私のことを……」

「覚えているに決まっているだろう。俺とお前は夫婦になるのだからな」


 信じられないことを口走った神様は、強く地面を蹴ってあやかしに斬りかかる。

その目にも留まらぬ速さに、あやかしたちは成す術なく――。