「全部、私を揺さぶるための嘘? なにそれ、だからなんだっていうの!」


 声を張り上げた私に、人間のふりをしていたあやかしたちがぎょっとして、一瞬、怯んだ様子を見せた。

その隙に、私は勢いに任せて今まで溜め込んでいた気持ちを吐き出す。


「毎日職場ではあやかしに絡まれてるし、子供のときなんか神様の気まぐれで何回神隠しに遭ったかわからないし、今さら怖がったりしないから。むしろ、人間のほうが怖いから! ……って、話は逸れたけど、人をおちょくるのもいい加減にして! 信じた人を裏切る人のほうがずっとずっとバカよ!」


 ぜーはーっと呼吸を乱しながら言い切ったら、なんだかスッキリした。

 でも、あやかしは基本的に人間を困らせて怯えさせるのが好きな生き物だ。

欲求に忠実で、人様の迷惑なんてなんのその。だから当然、反省するわけもなく……。


「うるせえっ、貴様を食らってヤル!」


 あやかしたちの口が裂けるほど開かれて、一斉に私に襲いかかってくる。

 ――逃げられないっ。

 そう思ったとき、突然視界をよぎる薄桃色の花びら。

 これって、桜?

 今は五月、もう散っているはずの桜の花びらがなぜここにあるのか。
疑問に思ったとき、校庭の桜の木が一気に花をつける。