「その特別な力が運んできてくれる出会いもあるはずだよ」


 あやかしや神様たちには振り回されてばっかりだけれど、孤独を埋めてくれたのもまた彼らだった。


「少なくとも私はそう信じてる。だから……」

 私は石を投げられていた男の子を抱きしめた。

「そんな風に自分を否定しないで」

「お姉ちゃん……ありがとう……っ」


 腕の中で男の子は息を詰まらせる。

肩を震わせていたので、泣いているのかもしれない。

その背中をトントンとあやすように叩いていると――。


「ありがと……ハハハハハハッ」

 狂ったように笑い出した男の子が、ぐにゃりと仰け反る。

「な、なに……?」


 あまりの豹変ぶりに頭が真っ白になっていると、男の子は勢いよく身体を起こした。


「ちょっとお前の記憶を覗いて情を揺さぶってみれば簡単に信じて、これだから人間はバカなんだヨ」


 ニタリと不気味な笑みを浮かべた男の子は、私の頭を飲み込むほど大きく口を開けた。

周りにいた小学生たちもケタケタと笑い出し、こちらに手を伸ばしてくる。


「ぐっ……」


 ゴムみたいにありえないほど伸びた小学生たちの手が私の手足を掴んだ。

そこでようやく、彼らがあやかしであることに気づく。

 身動きがとれないっ。

さっきのコウモリ男、校庭にいるのがあやかしだって気づいてたからやめとけって言ったんだ。

もう、もっとはっきり忠告してよね!

 とにもかくにも、本当に男の子が事件に巻き込まれたわけじゃなくてよかった。

 胸を撫で下ろして、改めて「怖がれ、泣き叫べ」と私を脅しているあやかしたちを睨みつける。