「やっぱり、あやかしと神様がやたらちょっかいかけてくるようになったのは……全部、この痣のせい?」


 だとしても、私になにができるというんだろう。

できることがあるとすれば、忌み嫌われようと、畏怖の目に晒されようと、生きていくためにここで働くことだけだ。

 怪奇現象を引き起こす私が転職したところで、うまくいくとは思えないし。

 少しでも気分が変わればいいなと願いつつ、顔を洗う。それから総務課の自分のデスクに戻った。

 その瞬間、またもや点滅し出す頭上の電気。


「お前を食わせろ、でないといたずらするぞ!」


 そこにはコップサイズの子鬼たちが群がっていて、困っている私を見てケタケタと笑っていた。

 そんな、『お菓子くれないと、いたずらするぞ!』みたいに言われても。ハロウィンか。

というか……いたずら、もうしてるけど。

でもまあ、いきなり襲ってこないだけマシだ。

彼らはあやかしの中でも温厚なほうだと思う。

とはいえ、あやかしが見えない人たちからすれば、私が怪奇現象を起こしてるように見えるわけで、つまり迷惑なことには変わりないわけで……。


「……はあ」


 ――私の人生、お先真っ暗だ。




 午後七時、仕事を終えた私は職場から徒歩二十分の距離にあるワンルームマンションに向かって帰っていた。

 両親とは私の周りで起こる怪奇現象のせいで昔からうまくいっておらず、高校卒業とともに実家を出た。

連絡もほとんどとっていない。

そういう事情があって社員寮のある今の会社に就職したのだけれど、結局どこに行っても同じ。

職場でもあやかしや神様がちょっかいをかけてきて、社員に『芦屋さんの近くにいると呪われる』とまで噂されるようになってからは寮にいられなくなり、自分でマンションを探して移った。