「子供の頃からあやかしと神様にいたずらされることはあったけど、歳を重ねるごとにどんどん被害が大きくなってる気がする……」


 なんというか、規模と頻度が格段に違う。

昔は『食いたい』と言って私に近づいてきたあやかしも、話せば考え直してくれた。

 でも、ここのところ私の迷惑なんてお構いなしだ。

たとえばレストランでの食事中、ウィンドウショッピング中、ガラスを割って私に襲いかかってきたりと凶暴になっている。

 神様に関しても助けてくれるのはありがたいのだが、それにかこつけてさりげなくどこかへ攫おうとしたり、神隠しに遭いかける回数が増えていた。


「死活問題だ……」

 このままじゃ結婚どころか仕事も平常心でできないし、命だって危ない。

「はあっ」

 本日二度目のため息をこぼすと、ふと自分の左手の甲が視界に入る。

「この痣……」


 うろ覚えだけど小学生のとき、私はひとりの神様に出会った。

その神様に口づけられた左手の甲には、うっすらと桃色の桜のような痣が浮かび上がっている。

しかも、この痣は私以外の人間には見えていない。

 どうしてこの痣をつけられたのか、その神様となにを話したのか、なにせ何十年も前のことなのではっきりとは思い出せない。

確かに覚えているのは、神様に口づけられたということだけ。

 この痣にどんな意味があるのかは知らないけれど、大人になるにつれてあやかしや神様に目をつけられることが多くなったのを考えると……。

これが私を不幸にしている気がしてならなかった。