『だから、この力がなくなればいいなんて思えないよ』

『……そうか。特別な力が人を幸せにするとは限らん。現にお前はその力で傷ついている。だが、それでも生まれ持ったものを受け入れている。物事の悪い面だけでなく、いい面にも目を向けられる健気な強さには感服する』


 それって、ポジティブってこと?

 神様の言ってることは難しいけれど、褒めてくれているのはなんとなくわかった。

私は神様の着物の袖を軽く引っ張って、『それだけじゃないよ』と付け加える。


『この力があったから、神様と会えたんだよ! だからやっぱり、この力があってよかったって思う』


 笑顔で言い切れば、神様が息を呑んだ。

そのまま神妙な面持ちで黙り込んでいた神様は、やがて静かに口を開く。


『先ほどは自分の願いなど考えたことはなかったと言ったが……今、できた』

『えっ、どんなお願い? 聞かせて聞かせて!』


 私がうきうきしながらせがむと、神様は目を細めて柔らかな笑みを浮かべた。


『お前とまた会いたい。自分がこんなにも欲深いとは思わなかった。とはいえ、神は自分の願いを叶えてはならんがな』

『ええっ、そんなの願わなくたって叶うよ!』


 神様って、欲がないんだな。

 それに驚いていると、私の言った意味がわからなかったのか、神様は怪訝そうに片眉を持ち上げる。


『なんだ、お前には神の願いを叶える特別な力でもあるのか?』

『そうじゃなくって、会おうと思ったらいつでも会えるでしょ? 私もまた神様に会いたいもん。だから、ふたりが同じ気持ちなら会えない理由なんてないんだよ』

『なるほど、会いたいなら会う努力をしろというわけか。うむ、それが俺の願いを叶えるための試練なのかもしれん』


 神様は顎に手を当てて、難しい顔をしながらよくわからないことを呟いていた。

 けれど、妙に納得している様子だったので口を挟まないことにする。