広い食堂は誰もいなくシーンと静まり返っていた

時刻が19時をすぎると人がぽつりぽつりとやってくる

葉月は言われたように配膳してカウンターから渡す

「あれ?由香さんは?」

「ちょっとわからなくて……すみません」

「あーそう(笑)」

学生はおぼんを受け取ると壁に掛けてある名札を取った

次々と学生がやって来て自分の名札を取っていく

あー、成程、来たら名札を取っていくとまだ誰が来てないかわかるんだ、へぇー

おぼんを下げに来た学生は名札を別のところにかけて食堂を出ていく

「ごちそうさま〜」

「はい」

下げられた食器を洗っていく葉月

「あれ、知らない人がいる、由香さん休みなんだ」

「すみません、助っ人です」

「ありがとう、いただきます」

みんなちゃんといただきますってそれにごちそうさまって……なんか直接言われると嬉しいな(笑)

葉月は自然に笑顔になっていた



勝手口が開いて先程の女の人が戻ってきた

「ごめんね、大丈夫だった?」

「多分?出すだけでしたから(笑)」

「ありがとうね、私は森下智歌(もりしたともか)、あと何人?」

「二人です」

名札は二枚残っていて秋月翼(あきづきつばさ)と小野匠(おのたくみ)と書かれてあった

「いつもの二人ね、もう来るでしょ」

智歌は炊飯ジャーと鍋を覗いて残量を確認していた

「大丈夫そうね……三宅さん」

「はい、鍋も寸胴鍋じゃなかったですし……」

「寸胴鍋?」

「あっ、いえ、何でもないです」

「採用!よろしく!」

「えっ、面接とか、履歴書とかいいんですか?」

「履歴書は後で出して(笑)住み込み希望だったわよね」

「はい」

「この奥に部屋があるの、そこ使っていいから」

「はい、あの他に私以外面接とか来なかったんですか?」

「来たけどね、ほら、時間が遅いじゃない?」

「確かにです」

「中々ねー、主婦は難しいわよ、独身の子も料理があまり得意じゃないとか……寮母で募集したのが間違いだったのかしら、料理出来る人って出せばよかったなって後で思ったのよ、電話で栄養士の資格持ってるって言ってたから……料理できるんでしょ?」