「んじゃ俺いくわ」



前日にはあんなに優しく開けたアパートの鍵を力任せに閉める景は、怒りがおさまらないのか顔や態度に全てが出ていた。



眉間に寄ったしわ。



感じ悪く放たれた声。



ーーーいいから早く行けよ!



二人の険悪な気まずい空気感に、周りも気付かないはずはない。



「景。んじゃ、バイト頑張ってね」



優奈は気をきかせ、あたしの代わりに景へ話かけてくれた。



「ああ、んじゃな」



「バイバーイ」



「バイバイ」



景はすぐ背を向け、バイトに向かう道を振り返りもせず歩き出した。



段々小さくなる影を見送るあたし達。



全然寂しくなどない。



それどころか気持ちは清々している。



はっきり別れを口にしたわけではない。



だが、このバイバイをしたきりあたしと景は二度と会う事はなく、永遠の別れをしたんだ。