「あははははっ!!」



「意味わかんね~!」



一度火がついた笑いは止まる事がない。



段々みんな打ち解けはじめ、さっきまでどことなく張り詰めていた緊迫感がどこかに吹き飛び、笑いがそこらに散らばっていた。


そして知らない者同士が会話を交わし、徐々に仲良くなり始めた頃。


目の前でキャーキャーやっている優奈から声が漏れ、目を移すと雅也といちゃついている。


「もう、雅也ったらぁ」



「なんだよ。俺たちラブラブだろ」


他行ってやれよって感じだが、イチャつく可愛らしいカップルは、どこにいっても浮いて見えるものだ。


ーー暑苦しいっつうの。ん?あっ、何?


あたしがそんな優奈達にイラついている時だった。


隣に座る景がさり気なく手を繋いできて、絡めてくる指の動きがやけにいやらしく、グニグニ動かして気持ち悪い。


「なっ、ちょっと」


あたしはみんなに気付かれないよう小声を出し、テーブルの下でとっさに手をはたいた。


すると景はジッと見つめ、今にも食らい付いてきそうな瞳で睨んでいる。



その瞳は獣が獲物に食らい付く瞳そのもので、気迫さえ感じる…



ーー視線いてえぇ~コイツどうにかして。つか、恐ええし



あたしはそんな景に恐怖心が芽生え、目をそらし、何気になく怜達がいる方向に視線を移した。



「あっ」


怜とぶつかり合う視線。


彼は、あたしを見ていたのがわかった。



子犬みたいな丸い丸い瞳でじっと…



そんな瞳に見入ってしまい、全く動けず、目が離せない。


ーー女みたいで可愛い…。はっ!やべっ



あたしはおそらく2、3秒の間で我に返り、視線から逃がれる為うつむいた。



まどろっこしいと言うか、くすぐったいと言うか、うまく伝えられないこの感情。



もしかしたらその時、あたしの中には何かが生まれていたのかもしれない。



~恋する気持ち~



当の本人は、まだその事実に気付いていなかったんだ。