「優奈に聞いたけど、歩さん、優奈の彼氏にちょっかい出してるみたいじゃないですか」


「んで?あんたに関係ないし、あたしから一切手出してないから」


「はっ?開き直り?」


絵里はムッとした表情を浮かべ、馬鹿にした声を出す。


何の事情も知らないのに知ったかぶりをされたのが許せない。


それでなくとも嫌いな女。


コイツに負けたくない。


「何言ってんの?なんも知らねえくせに」


優奈は絵里を使ってあたしに攻撃した事が気まずいのか、会話に入ってこない。


タバコをひっきりなしに口へくわえている。


視界に入る優奈のその動きがやたら不自然で、うっとおしくて仕方ない。


「優奈。今から彼氏に電話かけて。あたしがハッキリしろって言うから」


「だとよ。優奈、かけろ」


あたしは手に持っていたタバコに火をつけ、電話を指差した。


何度も自分を偽ろうとしてきた。


気持ちを殺そうともした。


でも心からいっこうに消えてはくれない怜。


煮え切らない関係に、はちきれてしまいそうで限界だった。


優奈が絵里を使った事、そして迫られた事。


もう逃げれない立場のあたしは後に引けない所まできている。


全てにおいて崖っぷちに立たされた気分だ。


優奈は二人に電話をかけるように言われ一瞬戸惑いを見せたが、電話を握ると慣れた手つきでボタン押し始めた。


くわえたタバコを口から離し、灰皿に目をやると大量のタバコで山になっている。


視線を変え、部屋を見渡すとこもる煙は霧のように白く、手探り状態のあたしの心境そのものだ。


『あっ、怜?優奈だけど。あのさぁ、ちょっと友達に変わるね』


優奈を見て頷くと、すかさず絵里に電話渡した。


『あたし優奈の友達なんだけどどういう事!?優奈、傷ついてんだけど!』


絵里は自分が当事者のようにムキになり、大声を張り上げる。


優奈と対して仲がいいわけでもない絵里。


熱くなるのを見てるこっちは


《何この女。うぜぇ》


と思い、目を細め、冷ややかに見入っていた。