「うぅ～ん…」


目に刺さる日差しがとてもうっとおしい。


眠い目を擦り、見慣れない風景に呆然とした。


あれ、ここどこだ…あっ！旅館！


ついていかない思考回路は、隣に眠る怜を見て一気に繋がる。


白い布団にうずくまる彼は本当に可愛い。


寝顔を独り占めしたみたいでほのかな幸せを感じていると


「ん～っ～！おはよ～」


「眠たい…」


みんなのつらそうな声が徐々に響きだす。


悪い事をした罪悪感からドキドキし、優奈をチラッとみると、優奈はどことなく疲れた表情で天井を見ていた。


「優奈、おはよう」


「ああん」


寝起きで不機嫌なのか、怜の隣に寝る約束を守らなかった事に腹をたてているのかわからなかったが、あきらかに気分を害しているのがわかる。


気まずさがあるまま体を起こし、あたしはトイレに行こうとした。


その時だった。


「歩、トイレ付き合って」


優奈が無愛想に声を出すと、バッグから薬を出しポケットにしまい込んだ。


何か言いたげなのがわかる。


「あ、うん」


優奈はあたしの腕をグッと掴んで無言で長い廊下を歩いた。


そのまま部屋から離れたトイレに連れ込まれ


“バン！！”


扉を力任せに叩きつけ、トイレ出入り口の扉は閉められた。


無言を続ける優奈は水道の蛇口をひねり、ポケットから薬を取り出して、指で錠剤の薬を潰しだした。


まるでイラつきをぶつけるように粉々になるまで潰す…


あたしはただならぬ雰囲気に唾を何度も飲み、見入るしかなかった。


薬を口に入れ水を含み飲み干すと、やっと優奈は重い口を開いた。


「歩、昨日なんで約束守ってくれなかったの」


「ごめん…」


冷ややかな口調の優奈に今にも潰されてしまいそうでビクつく。


他の奴ならなんて事ないのに相手が優奈だからだろうか…


「ってかさ、あたし寝てると思ってた？」


目の前が真っ白になり、声すら出せない。


優奈は鏡越しにあたしを鋭く睨み付けてくる。


優奈の目が一層震えを止まらなくさせる。


殺意にも近い視線から目が離せなかった。