口に乗せている布団が下に引っ張られ、怜の顔とあたしの顔が一気に近付いた。


暗がりとはいえ、ほのかに照らす月明かりで怜の顔がはっきり見え、目が離せない。


その時、目を閉じる隙もなく薄く温かな唇が重なった。


“かちっ”


前歯と前歯がぶつかり、彼のキスのヘタさがわかる。


愛おしそうにあたしの唇に怜は自分の唇をはわせてくる。


我を忘れ、怜の首に手を回してしまう。


あたしは初めてのキスじゃない。


キスどころか他の男達と何度も体を重ねた事もある。


それなのに、とろけてしまう感覚とはこういう事なのだろうか?


自然と目を閉じ、彼を感じていた。


「ふふっ」


唇が離れた時、怜は鼻で笑い出す。


首をかしげて彼を見つめると


「歯、ぶつかっちゃったな」


と言い、怜は照れ笑いをしながらあたしの横に倒れ込んだ。


「うおっ!やったぞ、唯!」


「マジ!?やったぁ~」


キスした当人より唯達ははしゃぎだし、くすぐられてるみたいで照れくささに輪をかける。


あ、あ、あ、やっちゃったよ〜〜


そう思い、頬を両手のひらで押さえつけ口は半開き状態だった。


「俺達も負けてらんねぇな」


興奮したのか唯達のライバル心に火がついたらしく、二人は布団にくるまるとイチャつき出す。


唯達を見てるのもなんだとあたしが天井に目をむけると、怜はあたしの手を握り締めてきた。


「怜君!?」


フワッと布団が頭上までスッポリ覆い被され、真っ暗な布団の中に怜と二人きりになってしまった。