「怜とキスしちゃえば~。怜、起きてんだろ」


怜を見ると、ちょうど目線の高さに怜の目があった。


月明かりで浮き上がる彼の横顔が一層綺麗に見えて映る。


「起きてるよ。おまえ何言ってんだよ」


怜は体を軽く起こし、唯達へはにかんだ声を出している。


「優奈、寝たか?」


雅也は暗がりから優奈を確認しろと合図を送ってくる。


ソッと隣を見ると、優奈は布団から顔を出し、ビクともせず目を閉じ寝ているように見えた。


「反応無いし、寝てるみたいよ」


唯達に優奈の様子を報告し、あたしは布団の上掛けに顔をうずめた。


かすかに鼻についた上掛けの匂いは古びた旅館の味があって、何となく懐かしく心地いい。


「ほれ怜、キスしろ。キスキス」


「歩さ~ん。怜君としちゃえしちゃえ」


唯達はあたしと怜を煽り出す。


優奈は寝てる。


とはいえそんな行動が許されるはずはない。


「何言ってんの!冗談やめてよ」


そう言いかけた時だった。