その日、夜遅くなるまで皆の興奮は収まらず、盛大に盛り上がった。


それもそうだ。


旅館に、人数のいる泊まり。


修学旅行に近い環境に、シチュエーションがそうさせてくれたのだから。


そして、なんだかんだと充実した時間を過ごしていたら、外は真っ暗でおそらく12時はまわっただろう。


「そろそろ寝ない?」


さりげなく唯がお開きの時間を知らせると、誰からともなく布団に入り出した。


「あたしこ~こ」


あたしは何も考えず、布団へ飛び込む。


隣を見ると、何食わぬ顔で怜が寝ていた。


うわっ、やべっ。


それでなくとも避けていたのに、よりによって隣に寝る事になるなんて…


運悪く優奈と怜の間を陣取ってしまい、二人を引き離してしまった。


ゆずらなきゃいけない。


でもなんか嫌だ…


優奈と約束したにも関わらず、あたしは約束を守らなかった。


気持ちのどこかに意地悪な部分があったんだ。


だからあたしはなんとなくそのまま布団に潜り込んだ。


背中向けて寝ればいっか。う~ん…
優奈と怜君キスしちゃうかな…
でもあたしがいるしな…


邪魔をしておきながら一人で想像は巡る。


恋人同士なら自然な事なのはわかっていたが、恋人ではない自分の立場にやりきれないでいた。


「電気消すよ。お休み~」


「ふふっ」


雅也は電気を消すなり、すぐ唯の布団に潜っていったのがわかった。


「ちょっと。チュッ」


一時間位すると、部屋には唇を重ね合わせる音が響きだす。


方向的に雅也と唯。


思春期で性に対して興味のある年頃の子はこんなものだから仕方ない。



気を使わない二人はますます激しく音を立てる。


「ふふっ。雅也ぁあ~」


音も気になるが、そんな音より隣に眠る怜がとにかく気になって仕方ない。


今すぐにでも抱きつけてしまう距離。


でも間近に優奈がいる。


天井を見上げ、眠れない目をバッチリあけていると


「ねぇ、歩さん」


小声で唯があたしを呼んだ。


「何?」


小声で返すと、暗がりから雅也も参戦してきた。