けれど、嫌いだからと言って場の雰囲気を壊す訳にいかない。


「わかった~うざ~〜〜い。ふふっ」


あたしも唯の真似をして、甘えた声で語尾を伸ばしてみる。


ドッとその場は笑いが起き、自分なりにつかみはよしと思った。


その後、雅也の提案通り皆で協力しあって、布団をあるだけ並べる。


パリパリの白いシーツがやけに綺麗に見えて、心が洗われそうだ。


雅也に負けじとあたしも浮かれてしまい、吸い込まれるように布団へダイブしていた。


「きんもちぃ。やっべ、ツルツル」


「あ~、歩ズルイ!!」


優奈もつられて布団へ飛び込んでくると、二人は顔を合わせて笑った。


子供っぽく顔を近付ける優奈は、何かを言いたげなのが表情からわかる。


周りを気にしつつ、優奈をもっと近付けたる為に腕を引っ張り、あたしは一気に顔を近付けた。


「おまえ、何した?」


「あのさ…あたし怜の隣に寝たい」


「バカか。当たり前だろ」


隣に寝れないと心配していたのか、あたしを不審に思ったのかわからない。


優奈の目はまっすぐで濁りはなく、きっと本気の気持ちをぶつけてきたのだろう。


「ねぇ、歩。怜とらないでね…」


「はっ?」


あたしは固まってしまった。


優奈はやっぱり何かを感じている。


怜とあたしの気持ちに気付いたのか…


「あたし本気だから」


優奈は紛れもなく「歩」という女に対する敵対心をむき出しにした。


動じたらいけない。


そう自分に言い聞かせ、平然を装い仮面を被る。


「テメェの男なんかとらねぇ~よ」


内心はビクビクしていた。


16年間生きてきて、心臓が飛び出るんじゃないかと思う経験はこの時初めてしたかもしれない。