「唯が雅也とくっついたの、さすがにびっくりしたよ」


唯は愛しそうに雅也を見つめていたが、あたしに話しかけられビクッとした。


「優奈のおかげですよ。あたし、雅也凄く好きなんです」


目尻を下げて嬉しそうに話す唯は、幸せそのものなのがわかる。


「はいはい、ご馳走様」


ワザと呆れ顔を作り、場を盛り上げようとふざけてみる。


「ちょっと歩さん」


「ん、何?」


唯に手招きされ近付くと、耳元に手を当てられた。


「怜君、歩さん好きなんですよね。協力しますよ」


「はっ!?」


優奈に聞こえないよう唯に小声で耳打ちされ、目が泳ぎ焦っていると、優奈はこっちをチラッと見て目をそらした。


「唯、んなわけないじゃん!」


ごまかしつつ優奈の不可解な視線を気にし、益々声を落とす。


こんな事が優奈に知れたらヤバイ。


「じつは雅也に聞きました。怜君見ててもわかりますよ。すっごい歩さんを目で追ってますもん」


唯には筒抜け状態なうえ、怜の動きも見抜くなんて…


あたしの中で、優奈に薄々と気付かれているのではないかと不安がよぎった。


女は勘がいい。


気付いていても知らないフリをする。


過去の恋愛で経験済みだったあたしは、優奈を一瞬疑ってしまう。


なんとしても隠し通さないといけない。


なぜこんなに必死だったのかわからない。


ただわかっているのは優奈との仲に亀裂が入りたくない。


自分に仮面を被せても守りたいものだってある。


だがそんな簡単に物事が進むはずはなく、優奈とぶつかるのは時間の問題だった。