「もうかわって!」


あれからあたしが優奈の家に行くたびその言葉が発せられ、嫌がらせかと思うくらい必ず怜の電話を渡される日々が続いた。


絶えない二人の喧嘩。


あたしは泳がされているのか、振り回されているのか、不快に感じてしまう。


やはり優奈に試されているのだろうか?


心を見透かされたのか怜の告白に気付いたのか
、段々優奈に疑いを持つようになっていったんだ。


なのにあたしは怜と会話を交わせば交わすほど、自分の気持ちは抑えきれなくなりそうになっていた。


怜に一段と惹かれていくせいだろうか。


優奈の存在を邪魔に感じたり、憎らしく感じる日もある。


そんな事を繰り返していた矢先。


制裁は下ってしまった。


優奈の家にいつも通り遊びに行くと、優奈は突然気に入っているCDを大音量にしだし、あたしに問い詰めだしたんだ。


「怜、なにかにつけては歩の事ばっか聞いてくるんだけど」


何か言いたげな顔で、探りを入れだした優奈は、間違いなく怜とあたしの関係に勘付いてる。


「優奈とあたしは親友だし、知らない人の会話出すわけにいかないでしょ」


目をそらし、自分なりにはうまくかわしたつもりだったが、優奈の攻撃はおさまらない。


「怜、歩が好きなんじゃないの?」


「何言ってんの!あんたら付き合ってんでしょ!」


痛いところを突かれ動揺してしまい、ついあたしはムキになってしまう。


「だっていつも歩の話しばっかりなんだもん…」


しゃがれ声とともに優奈はうつむくと、膝を抱え、体を丸め込む。


「なんもないってば!」


喧嘩腰に優奈を怒鳴り、あたしは精一杯のしかめっ面を作った。


本当は優奈に嘘などつきたくないのに、自分を守ろうと頭が働く。


「ごめん」


「謝んな…謝んな!!」


謝らなければいけないのはあたしだ。


嘘で嘘を固めたあたしが謝るべきだ。


それなのに優奈は申し訳なさそうに小さな体を一段と小さく丸めた。


「歩、応援してな」


「うん。応援すっから。大丈夫だから」


軽く肩を叩き、“心配すんな”と言わんばかりにあたしは声を荒げる。