即座に家へ帰り、自分の部屋の扉を開けるなりあたしはベッドへと身を投げた。


ピンと張っていたベッドカバーが淫らに波うち、体を覆う。


壁一面に貼られたバンドマンのポスターが「お前最低だな」と言いたげしてるようにすら見えてきた。


「わっかんねぇよ!!どうすりゃいいんだよ!!」


枕の裾を握り、顔をグイグイうずめ、誰もいない部屋で声を張り上げている。


自分の気持ちが壊れてしまいそうで、どうにも身動きがとれない。


まさに鎖でガチガチに巻かれた感じだ。


「諦めたらいいだけなのに…なんで同じ奴好きになってんだよ!あぁあああ!!」


ベッドから無造作に体を起こし、部屋にある子機を睨みつけた。


「怜君の番号わかんねぇからかけれないじゃんか。馬鹿みたい…」


あたしは彼の彼女ではない。


心が繋がったとしても、連絡先すら知らない。


優奈を通さなきゃ、何にもできない。


「ちくしょう…」


あたしは鳴るはずのない電話を胸元に握りしめ、無力な自分が情けなくて溢れる涙で顔を汚した。


あたしと怜には越えられない壁がある。


‘‘優奈’’

という友情の壁。


その壁は何よりも高く、何よりも尊く、何よりも険しい。