「バイト先の先輩一人暮らししてんだけどさぁあ〜明日アパートいないらしくて部屋貸してくれんだけど泊まらね?」

高校2年の春。


同じ歳の彼氏、景(けい)からお誘いの電話がかかってきた。


あたしと景は付き合ってはいる。


でも、まだやる事もやっていないし、押しに負けて付き合っただけの好きでも何でもない形だけの彼氏だ。


「あ〜〜。ん〜〜ん…。二人きりとかなんだし、優奈(ゆな)と優奈の彼氏も連れてくわ」


「えー!!!なんでだよ!?」


「いや、なんか照れるからさ…」


本当はあんた好きじゃないし、次いけそうな男がいたら別れるつもりでいたんですけどなんて言えないうえ、二人きりになっていやらしい事をされたくないから他の人連れてきますなんてふざけた理由も言えない。


だから恥ずかしいフリをしてちょっとだけ可愛い女を演じてみる。


「だよな。俺たち付き合ってまだ日浅いし、そら照れるわな。まっ、しゃあねぇ。みんなで楽しもっか」


「ありがと〜〜景優しい〜〜好きぃぃ」


「俺もぉお〜〜」


ハートマークが飛んで来そうな景の声を聞きつつ、こいつ馬鹿だななんて思いながら嘘の好きで繋ぐ。


繋ぐ意味なんてない。


なのに繋ぐ。


だって一人は嫌。


だから自分を必要としてくれる誰でもいいから利用して、好きを繋いでいく事であたしは安心を作っていたんだ。