「えへへっ。なんか嘘みたいだ」


「嘘みたいって?」


「いや、怜君とこんな簡単にうまくいくなんて思ってなかったし」


いい顔をしている優奈の横顔は、うつむき加減でもよく映える。


部屋の照明がいい感じに目鼻立ちを浮き立たせ、長いまつげの下に見え隠れする瞳が潤み、まばゆい。


その瞳を見ていたら、あたしの胸はなんともいえない感情で支配され、激しく締め付けられた。


「あああぁぁ!!歩も早く男作れよ!んで、ダブルデートしようぜ!」


「お前、気はええっつの」


「うっせ!!」


優奈は優奈なりに人には見られたくない自分がいる。


だからわざと大声で恥じらいを隠し、強い自分を演じる。


いつもそう。


「あたしは歩に負けない」といわんばかりに暴言を吐き、強がる。


優奈は昔っからそうゆう女だ。


優奈の見られたくなさそうにさりげなくうつむく姿に見いっていたあたしは、潤んだ瞳に気付かぬふりをして、つけっぱなしのテレビに視線を移し


「はいはい。吠えてろハゲ」


と、笑いながら冗談交じりに笑いをとった。すると優奈は


「ハゲとかハゲてねえっつの!馬鹿か!」


これでもかというくらい荒々しい口調で、いつも通りにあたしを罵倒した。


「うるせ、ボケ!」


「ハゲだのボケだのおめえはなんなんだ!笑わせんな!」


「笑ってんな!馬鹿が!はははははっ!!」


ごまかし合ってもふたりの精一杯が重なり合った瞬間、弾けとんだ笑い。


何にもかえがたい、友情の絆。


これが今出来るあたしなりの精一杯で、これが今出来る優奈なりの精一杯だったんだ。


‘‘友情と愛情のはざま’’


今まで経験した事のない厚い壁にぶち当たったてしまったあたしは、優奈に対する熱い思いと、怜に対する淡い恋心に挟まれ、激しく心を揺さぶられていた。