「あのさ、優奈に協力してやって欲しいんだ。怜と優奈を歩にくっつけて欲しい」


雅也は大馬鹿だ。


今彼女に振られたばかりなのに人が良すぎる。


というか、優しすぎてあたしは泣きたくなった。


「本当それでいいの？後悔しない？」


「優奈大好きだから俺が幸せにしたかったけど…俺じゃダメみたいだから…」


「後悔…いや、うん。なんでもない。雅也わかったよ。あたしはどうすればいい？」


「俺、今すぐ怜に電話して優奈の家にかけさせるから。んで、優奈に告白させる前に歩が怜に一言“優奈いい子だからつきあって”って言ってやって」


あたしの口から“付き合って”と怜に伝える。


正直、自分が置かれてる立場を恨むしかない。


～友達を失う～


それは、あたしにとって何よりも避けたい事。


中学時代、とても大切な女友達を一瞬で失った経験があったから。


女共にはめられ、跡形もなく関係が崩れてしまったから。


だから二度と同じ過ちを繰り返したくなくて、どうしても争いを避けたかった。


築き上げてきたものが崩れる。


相手に真っ直ぐ気持ちをぶつければ済むのかもしれない。


ぶつかれば、本当の友情が築けるかもしれない。


でも、そんな勇気があたしにはなかった。


情けないくらい弱く、ダサい、小さい奴だったんだ。


そして、雅也の願いを聞き入れる約束を交わしたあたしは優奈へ電話を手渡し、雅也との会話を終わらせた。


怜からの電話を待つ間、優奈は


「なんて言おう。歩～どうしよう！？ドキドキすんだけど」


恋する優奈はあたふたし、あたしの気も知らず、助けを求めてくる。


ついさっき彼氏を捨てたのに、そんな過去はもう何処かに消えて、女スイッチが完璧に入った優奈。

緊張からか、やたら口にタバコを加えていた。


「好きだって言うしかないじゃん。頑張れ！」


“頑張れ”


あたしの大嫌いな言葉。


無責任な汚い言葉をあたしは言いはなった。


ただの逃げ言葉“頑張れ…”