〜こいつ本気だ〜



と思ったあたしは自分の気持ちに気付き出していたのに、優奈の本気さに心を打たれていた。



そしてそんな優奈を見て、景に対する気持ちをグッと押し殺し「優奈に協力する」


そう決めた瞬間、自分の中で何かが弾け飛んだ。


それからデパート巡りをして買い物をし、適度に時間を潰し終えた二人は、いつも通り優奈の家へと向かった。


日常生活で使う道に、見慣れた部屋。


昼に出掛け、結構な時間がたっているのに充実した時間を過ごしたおかげか、いつの間にか時計の針は夜の八時を告げようとしている。


そして、月光が綺麗に窓辺を占領したその日の夜。


予想もしていなかった行動を優奈は起こしたんだ…


「もしもし。雅也？あのさ…嫌いになったわけじゃないんだよ。でも…別れて欲しいんだけど…」


あたしの目の前で気まずそうに雅也に電話をかけだした優奈。


有無言わず、別れを告げている優奈を見て、もう動き出した歯車は誰にも止められないんだと思った。


優奈口から漏れる一言一言に耳を傾け、つられて息を飲んでしまう。


「うん。あのね、怜君好きになっちゃってさ。ごめんね…うん…そう、うん。うん…」


雅也の声があたしの耳に届くわけもなく、何を言ったかわからない。


ただ、懸命に話を続ける優奈をひたすら見つめるしかなかった。


「怜君の自宅の番号教えて欲しいの…えっ、あ？歩？いるよ。うん。わかった、変わるね」


優奈の視線を感じ、キョトンとしていると、なぜか雅也はあたしに電話を変わりたがった。


目の前に差し出された電話。


躊躇一つせず、迷わず飛びつくようにあたしは電話に出た。


「はいよ！どうしたん！？」


「あっ、歩。優奈から聞いたろ？俺さぁ、振られちゃった……あははっ…」


「雅也、無理して笑わなくていいよ」


「えへへっ…」


雅也の声を聞いたら、無性に悲しくなる。


いい奴が振られるって


凄く凄く悲しい…


それなのに