怜と出逢った日から、あたしは優奈と遊んでも怜について触れはしなかった。


怜について話したらいけない気がしていたから、優奈と会ってもあえて触れない。


正直、揉めるのが嫌。


男絡みで揉めたくない。


だから、とことん避け続けた。


それから数日たち、高校が休みの日。


優奈とあたしは駅前にある大きなデパートのゲームセンターへと遊びに行った。


皮肉にもそこは雅也が優奈をナンパして、付き合うきっかけになった場所だ。


訳のわからない、おもしろくもなんともないゲームを二人で眺めて


「なんか懐かしい~ここで雅也にナンパされたよね」


「だね。んで付き合ったんだよな…」


優奈は雅也との思い出に浸り、遠い目をして女の顔をしている。


それなのに何も知らない男の為、大切な人を捨てようとしている。


理解しきれなかったけど、そんな優奈は公衆電話の前を通りかかった時、話し出した。


「いきなりだけど、あたし怜君とつきあいたいんだけど…」


「……お前、雅也とまだ別れてないよね?」


「うん…」


あたしはあまりにも真っ直ぐぶつかってくる優奈にイラつき、手を引き、睨み付けてしまった。


「もし怜君と付き合ったとしたらお前から振るなよ!!」


本心はこんな言葉を言いたくなかったのに


怜を渡したくなかったのに言葉で噛み付いた。


すると優奈は


「あたしからは振らない!だから応援して!」


あたしの手を力強く握り、両手で包みこんだ。


「わかった。約束守らなかったら…守れなかったら思いっきり殴っからな!」


「うん。殴っていいから。歩、ありがとう」


それでも真っ直ぐぶつかってくる優奈は目を輝かせている。