「歩、ちょっといい?」



「ん、何?」



優奈に近付くなり、あからさまな険悪な雰囲気が漂い、嫌な予感がする。



男三人とは少し離れた椅子に無理矢理誘導され、座るやいなや、優奈は口を開いた。



「お前さ、もしかして怜君気に入った?」



「怜君?可愛いなって思うけど」



「思うけど?」



「それだけ…」



あたしから話を聞いた優奈は、ありえないスピードで機嫌よく笑顔を浮かべ



「あたし怜君気に入っちゃった~。可愛いもんね」



敵は撃破したと言わんばかりに口角を上げ、目じりを下げる。



案の定の展開に、自分の気持ちを隠してあたしは正解だったと思った。



男が絡むと女は怖くなる。



優奈との関係。



優奈との友情が崩れるのが本当に怖かった。



「そんな気してたよ!でもさ、雅也どうすんの?」



明るく笑顔を振りまきながら、優奈の本音をさりげなく聞きだすと、優奈は苦しそうに口をへの字に曲げて頭を抱えた。



「何?」



優奈と雅也は別れる要素がなく、とても似合っていて、優奈も雅也の優しさはわかっていたはずだ。


だが、それなのに優奈は想定外な発言をした。



「雅也と別れなきゃね…」



「マジかよ!」と言いたかったし、あたしの内心はとても複雑。


けれど表情を変えず、冷静を装い



「うん。そっか」



あたしはそう言うしかなかった。



たった1日で優奈は怜に心を奪われている。



そして



あたしもたった1日で怜に惹かれていたんだ。