各自会話を交わし、あてもなく歩いていると、緑の自然で囲まれた水が緩やかに流れる美術館が目に飛び込んだ。


絵画のような澄んだ木々に、威圧感のない建物。



気品漂うレンガ調の道を、浮かれて小走りに駆け出し



「あっ!あそこ行こう!」



あたしは勢いよく優奈の手を引っ張り、美術館の近くまで行き、光沢のある石の椅子に座った。



キラキラ光る水は、つい見とれてしまうほど綺麗に流れている…



男三人もこっちを気にしつつ石の椅子に座り、足を組んで何かを話し出し、ゲラゲラ笑っている。



男の笑いが気になったのか優奈は「ちょっと~何なにぃぃ!?」と言いながら三人の元へ駆け寄り、輪の中心で話しだした。



あたしは他なんておかまいなしに椅子から立ち上がり、水の流れる方へ近寄り、ジッと水の流れに見とれていた。



よく見ると、あめんぼが水面を元気よく蹴っている。



小さく、とても細くて折れてしまいそうな手足で必死に泳ぐ姿。



「うわぁ~なんかいいなぁ~一緒泳ぎてぇぇ…」



あたしが独り言を口にし、あめんぼに見入っていると、後ろから人の気配がした。



「歩ちゃん。何やってんの?」



声の方向を追いかけ後ろを振り返ると、怜がいい笑顔で立っている。



怜の目を見るのがなぜか恥ずかしくなり、あたしは下を向きながら



「あめんぼがさ、いい感じなんだよ」



「はっ?何?あめんぼ?あっ!マジだ!」



意味不明な事を言っているのに、そんな事も気に止めず怜は少年みたいにはしゃぎだした。



彼は反射された光に照らされ、キラキラ光る水のように見える。



あめんぼに気をとられている怜の顔を、あたしはいつの間にか自然と見つめていた。