「どおりで美形なはずだ……」


「珍しく褒めるね。ありがとう、妹も可愛いよ」


「でしょうね」


「他の人には言わないでほしいな。君じゃなければ言わなかったことだから」


「うん、分かった。芸能人って色々大変そうだもんね」


 ミヒロはシングルマザーとしても有名で、父親の名前は一切公表していない。

 廈織くんもお父さんのことだけは私にも話してくれなかった。


 秘められた生い立ちを話せるような、濃密な仲ではないのだから当然のことかもしれないが。


「ごめんね」


 申し訳なさそうに笑う彼が、いつか秘密を打ち明けてくれるかもしれない日を、私は勝手に想像していた。