*   *   *



「希望、彼氏と別れたって話、マジなの?」


「嘘ついてどうするのよ」


 日曜、学校からそう遠くはない最寄(もより)駅に集合した私と友人たち。

 つまらなそうにスマホを操作する私に友達の一人が声をかけてきた。


「なんか冷めちゃったんだよねー。長く付き合うと色々あるのよ。だから今日はさそってもらって嬉しかった。ありがとね」


「今日は新しい恋の相手見つけようね!」


「うん」


 友達の言葉に私は満面の笑みを浮かべた。

 内心、合コンの誘いを受けたことを後悔していたのだが。

 新しい出会いが欲しいわけではない。

 私が本当に欲しいものは「心の休息」だ。

 そう思っているのに、移す行動すべてが空回りになってしまう。

 今日のこともその一つだ。


「そういえば聞いてなかったけど、相手の男の子ってどういう人が来るの?」


「え? うちの学校のやつらだけど……」


「え……そうなの」


「大丈夫だって! 希望は今フリーでしょ? 気にせず楽しもう!」


「うん……」


 相手が同じ学校の生徒だなんて、楽しめるはずがない。

 私が悠希の彼女ということは多くの生徒が知っている。

 この合コンに参加するということは、必然的に悠希と破局した事実を語らなければいけないのだろう。

 これではせっかく彼が私のためにしてくれた優しさを自分で踏みにじることになってしまう。

 私の心は強い自己嫌悪の感情に包まれた。

 数分後、相手方の男性たちが姿を現した。

 てっきり知り合いばかりのつまらない合コンになると思っていたのだけれど、私のことを知る者はいなかった。

 一人を除いて。