「もういいよ、女心を男の悠ちゃんに言うだけ無駄だったみたい。そろそろ暗くなるし、帰ろう」


 三年間着用してすっかりくたびれたセーラー服をひるがえしながら立ち上がる私。


「そうだな。それにしても、随分と日が長くなったな」


「そりゃそうだよ。だって、もう春だよ」


 お尻についた土を払う私に続き、悠ちゃんも立ち上がる。


「伸びたね、身長」


「そりゃ、成長期だし、ずっとバスケやってたからなぁ」


 小学校の時に一緒に始めたバスケットボール。

 すぐに飽きて辞めてしまった私に対し、悠ちゃんは中学を卒業した今も変わらずバスケットボールを続けている。

 だから知ってる。悠ちゃんがどれほど努力家なのか。


「高校でも続けるんでしょ? バスケ」


「もちろん。もう新しいバッシュも決めた」


「気が早いなぁ」


 苦笑する私の横で、悠ちゃんは嬉しそうに笑っている。


 小さな子供のような笑顔に私は「しょうがないな」とため息をついた。