あっけにとられながら廈織くんを見ると、彼は困ったように片手で顔を覆っていた。


「えーと、私に話したいことがあるの? 廈織くん」


 家を出る間際、花音ちゃんは私に向かってウインクをした。

 ケーキを買いに行く、というのはただの口実で、本当は私と彼を二人きりにするために色々作戦を練っていたのだろう。

 意識した途端、急に恥ずかしくなり、私は汗ばむ手の平を服で拭う。


「話したいことなんてないよ!」


「あ、そうなの……」


 私の様子に廈織くんは動揺していた。


「いや、そうじゃなくて! ごめん、ちょっと混乱してて……」


 初めて会った時には感じなかったが、花音ちゃんは思ったよりずっと明るくお転婆なようだ。


「ははは! なんだか花音ちゃんにしてやられた! って感じだね。私たちはただの友達なのに」


 言いながら悲しくなったが、この場合は仕方のないやりとりだ。

 今この場で、私が彼を好きだとバレる訳にはいかない。


「そんなところも可愛いんだけどね。時々、肝が冷えるよ」


「ちょっとー、本人がいなくなった途端に惚気んのやめてくれない?」


「つい、ね」


 ふざけていつもの調子で笑い合えるまでにお互いの精神が回復したところで私はニュースに切り替わったテレビを消して、無音の中で言った。