淳也くんは、わたしと家が近くないにも関わらず、わたしの家の近くまで送ってくれた。
「送ってくれて、ありがとう」
昨日の夕方、心が湿って重かったからなのか、なんだか前よりも、ずっと心がふわふわと軽い。
「でも、送ってもらうことになっちゃって本当に良かったの?」
「いいよ。別に今日は何の予定もないしさ」
なんでもないという風に、彼は答えた。
「でも悪いな。家、遠いのに」
「いいって。ほら、家入って休みなよ」
わたしの家のドアを指差しながら、彼は言った。
そう言っている彼には、どこにもチャラいという感じはなくて。
本気でわたしのことを思ってくれているのが伝わった。
「あっ。うん、ありがとう。じゃあね」
「うん、じゃあ」
わたしは、ドアを開けて家に入るふりをしてから閉じて、また外に出た。
彼の後ろ姿が見える。
わたしは、彼の姿が見えなくなるまで見ていた。