まだ会って数分しか経っていないが、いいな、好きだなと思える人柄だ。とても癒しを貰える。これは、これからこのマスターに会う為に通ってしまうかもしれない。
「おや、まさかこんなくだらない話でお客様の笑顔を引き出せるとは思ってもみませんでしたよ」
そう言って楽しそうに笑うマスターにつられるようにして、一緒になってくすりと笑う。
最初は外観が何だか不気味だななんて思ったりしたけれど、そこで入るのを躊躇して戻ったりしなくて良かったと今は思う。
初めて来た場所なのに、なぜだかここはとても落ち着く。マスターの人柄もあるのだろう。
「突然こんな事お伺して、もしご気分を悪くされたら申し訳ないのですが……」
すっかりこちらの気持ちが緩んだところで、そう前置きしてからマスターが切り出す。
「ひょっとして、何か悩み事がおありですか?もしくは、悲しいことがあった、とか」
まさかの台詞に、びっくりして思わず目を見開く。
確かに、今日はいつになく落ち込んではいるのだけれど、そんなにわかりやすく顔に出ていただろうか。
退社する前に先輩のところに改めて謝罪に行った時なんか「落ち込んでるかと思ってたのに、お前全然平気そうだな」なんて言われたくらいなのに。