仕事でちょっとしたミスをした。最初は本当に、小さくて些細なミスだった。

けれどそれを取り返そうと頑張ったら裏目に出て、更に頑張ったら今度は空回ってしまって、結局上司に怒鳴られ、先輩には迷惑をかけ、同期に失笑され、後輩にフォローされるという最悪の事態にまで発展した。

それでも何とか乗り切って退社したのはいいけれど、気持ちはどんよりと沈み込んだまま浮上の気配は見られなくて、帰宅する足取りはなんとも重い。

そんな風にとぼとぼと歩いていたら、後ろから早足でやって来たサラリーマンにすれ違いざまに舌打ちをされ、それがまた心に突き刺さる。

ああ、もうだめだ。これは家まで持たない。
少しだけでいい、休みたくなった。どこでもいいから、どこかで少し……。

そんな時、ふと“営業中”の文字が目に留まった。

よく見ればその看板には手書きの赤い矢印もあって、それは路地の奥を指している。

指された路地をしばらく見て、看板に視線を戻して、また路地を見る。

それから、足を踏み出した。手書きの赤い矢印に導かれるように、路地の奥へと。

先ほどまで歩いていた大通りの喧騒から外れてしばらくすると、道の突き当りにそれは現れた。