「あの、えっと……よろしければ、おかわり、いかがですか……?」


声につられるように視線を上げると、目があう直前でマスターが微妙に視線をずらす。目はあっていないのに、頬は真っ赤だ。よほど恥ずかしいらしい。

これはやはりおかわりはお断りして早めにお暇するべきか、いやでも本音を言ってしまえば、この美味しい紅茶をもう一杯頂きたい。

どうしようかと思案していると、マスターのか細い声が続いた。


「あの、えっと……これは、僕からのサービスです。不甲斐ない僕なんかがお相手をしてしまったご迷惑料と言いますか、情けない所を見せてしまったお詫びと言いますか、だからあの……代金の方は、どうかご心配なく」


そのことは別に心配していなかったのだが、本当は何で悩んでいたかなんて、この際別に言う必要はないだろう。

情けない所なら今も絶賛見せまくっているマスターだが、一度も失礼な店員だなんて気持ちは湧いてこなくて、むしろそんな恥ずかしがりやなところが可愛いななんて思ってしまう。

だから結局、マスターからの好意を、小さく頷いてありがたく受けることにした。