新たに差し出されたおしぼりを受け取って、そっと口元に当てた時


「……大丈夫、ですか?」


か細い声が聞こえた。

視線を動かしてみると、カーテンの向こうに隠れるようにして、若い男性がこちらを見つめている。

目があうと恥ずかしそうにぱっとカーテンの後ろに隠れて「す、すいません……」となぜか謝罪を口にする男性に、今度はカウンターの向こうから深いため息。


「全く……そんな調子じゃ、私はいつまで経っても引退できないじゃないですか」


先程までの穏やかな物腰とは打って変わって、ずんずんと足音荒くカウンターの中を歩いて行った男性は、カーテンの後ろにいる若い男性の腕を掴んで、半ば強引に店の方へと引きずり出す。


「りゅ、りゅうさん……!僕は、接客とかそういうのは、ちょっと……」


ようやく全身が見えるようになって改めて見てみると、全体的に細身ですらりと背が高い。

けれど、それよりなにより目を引くのは、その顔立ち。

色が白くて、どこもかしこも精巧に作られた人形のように整っていて、とても……綺麗だと思った。