いぢわる王子様

葉はすっかり抜け落ちて、寒々しい枝だけになった秋の終わり。


私は、あと数センチで額が地面につく、というところまで、頭を下げていた。


ここは学校の廊下。


他の生徒たちが何事かと、私を避けながら足早に通り過ぎる音が聞こえてくる。


「本当に、ごめんなさい!!」


そんな恥ずかしい状況の中、私は恥ずかしげもなく大声で謝った。


私の目の前には……律と、誠先輩がいる。


昨日、すぐるに会ってから自分の中で決心がついた。


私はきっと、何があっても、なにが起きても、すぐるの事が好きだ。


今は、その気持ちを2人にちゃんと聞いてもらいたかった。


「碧……」


律が、軽く引いているような口調で呟く。


それでも、いい。


「律、本当にごめん。私、律を傷つけた」


「もう、いいよ」


周りの目を気にしてか、笑顔が引きつってる律の顔を安易に想像できた。


「誠先輩。本当に、すみませんでした!」


「碧ちゃん……」


困惑しているような、誠先輩の口調。


「私、誠先輩の優しさを利用しただけだった……」


「それは……、俺から『利用していいよ』って言ったことだしさ。それに、昨日の電話でもう吹っ切れた」


「……誠先輩……」


それでも、私はまだ2人に対する罪悪感から、顔を上げることができない。


「それにさ、碧」


今度は、律が少しうれしそうな、照れているような声で言った。


え……?


その口調に、私は顔を上げる。


すると……手をつないで、微笑みあっている誠先輩と律が見えた。


え? なんで? どういうこと?


今度は、私が困惑する番だった。


仲がよさそうに手を繋いでいる2人の前に、土下座をする私。


なに?


他人からみれば、かなりおかしな光景だろう。


「私たちね、昨日から付き合いはじめたの」


「は……?」


えぇ!?


驚きすぎて、声が出ない。


「碧ちゃんから電話もらって、その後半分ヤケになって喫茶店で大盛りのパフェを食べてたんだ」


「そこに、同じく碧の事でモヤモヤしてた私が偶然通りかかって、お店に先輩の姿を見つけて、声をかけたのよ」


ニコニコと、うれしそうにそのいきさつを話す2人。