すぐるがいなくなってしまう痛みよりも、数倍、数百倍は小さな痛みだ。


「私、誠先輩のこと、本当に好きでした」


初めて手をつないだ人。


ずっと憧れてきた恋愛の相手。


けどそれは、理想でしかない。


憧れは、憧れのままだから、美しい。


「すぐるの次に、本気で、大好きでした……」


私がそう言うと、誠先輩は最後に『アハ』と笑って、


電話を切った……。


☆☆☆

私は鼻をすすり上げた。


これで、何度目かだ。


すぐるが、無言のまま私の頭をなでてくれている。


「いっぱい、傷つけちゃったの」


「うん」


「律も、誠先輩も。本当にすごく大切な人たちなのに、私が傷つけちゃったの」


「碧……」


すぐるが、私の体を抱きしめる。


「それは、違う」


「え……?」


「今回のことは、俺が悪かった。俺の、イイナズケの事で碧は動揺してたんだ」


「すぐる……」


イイナズケ。


すぐるの声でその言葉を聞くと、息が詰まる。


「けどな、碧」


すぐるは、手の中に握り締めていたものを私に見せた。


あ……。


スーパーボール……。


それを電気の明かりに向けて覗き込む。


「俺、言ったよな」


「へ?」


「『俺の碧への気持ちは、いつでもこの中にある通りだ』って」


「あ……うん」


お祭りの時のことだ。