「なに?」


必死に平静を装い、聞き返す。


「あいつとの関係は、どうなってる?」


どうなってるって、言われても……。


きっと、誠先輩とももう付き合えない。


ちゃんと『別れる』と口に出して言ったワケではないが、先輩だって、もう気づいてることだと思う。


「付き合ってるのか?」


すぐるの言葉に、私は命一杯首を振った。


「ちゃんと、別れるとはまだ言ってない……。けど、もう……」


「なら、今すぐに電話しろ」


「え?」


私の携帯電話に、誠先輩の番号を表示するすぐる。


「早く」


「ちょっ……待ってよ」


「待たない」


携帯電話はすでに呼び出し音が鳴っていて、すぐるはそれを私の右耳へ押し当てた。


しばらくすると通話状態になり、誠先輩の声が聞こえてきた。


『もしもし? 碧ちゃん?』


「もしもし……」


どうしよう! なんて言えばいいの?


誠先輩の声が聞こえてきた瞬間、すぐるの表情が険しくなる。


『なにか、用?』


「あの……」


誠先輩も、なんだか機嫌が悪いような口調だ。


「あの、この前突き飛ばしてしまってすみませんでした」


咄嗟に、私は謝っていた。


電話越しだというのに、頭まで下げて。


『あぁ……。ビックリしたよ』


「……ごめんなさい」


『いいよ。あれで碧ちゃんの気持ちは十分に理解できたから』


いつも優しい誠先輩が、突き放すようにそう言った。


ズキン。


一瞬、胸が痛む。


けど、いいんだ。


これで、いいんだ。