思わず、すぐるに抱きついてしまう。


あぁ、すぐるの匂いだ。


すぐるのぬくもりだ。


それだけで、胸の奥がギュッと苦しくなる。


けど……。


「ど……して?」


どうして、ここにいるの?


色んな思いがあふれ出して涙がにじむ。


その目で、まっすぐにすぐるを見つめた。


「碧が、泣いてるような気がしたから」


「え……?」


すぐるは私の涙を、ペロリと舌でなめ取った。


「メソメソしてんじゃねぇよ」


そんなこと、言われたって……。


体温が、急激に上昇していく。


『好き』とか『愛』とか、そんな簡単な感情が、沢山の感情と混ざり合っている。


すごく近いのに、遠い感情。


まるで、すぐるにもらったあのスーパーボールのように。


私は、スッとすぐるから体を離した。


本当は、離れたくない。


けど、ちゃんとケジメをつけなきゃいけない。


「すぐる、聞きたい事があるの」


どうして、私が休んでるときに一度も連絡をくれなかったの?


なんで、イイナズケがいるのに、私と付き合うなんて、言ったの?


「俺も、碧に聞きたいことがある」


「え?」


「滝野とのことだ」


誠先輩との事……?


ドクン。


ドクン。


心臓が、早く打つ。


背中に冷や汗が流れた。